· 

第7話

《煌めく音》

 

Eugen Indjic先生が亡くなったのを台湾のピアニストの友人のInstagramストーリーで知りました。。

 

彼の通う台北の芸大には客員教授でいらしていたとのこと。

 

私がIndjic先生を初めて知ったのは学生時代に留学中プラハの演奏会での事でした。

 

その煌めくタッチに惹きつけられ、一瞬でファンになりました。

 

好機はすぐにやって来ました。

 

彼は毎夏チェコのサマーアカデミーに来ていて、そのエージェントが私の教授とも親しく、教授承認の元レッスンを単発で受講する運びとなりました。

 

Indjic先生は大変社交的で明るい方でした。

 

レッスンではプロコフィエフのソナタと、スメタナのマクベスと魔女たちを聴いてもらいました。

 

憧れのピアニストにタッチを褒めてもらい、若い自分は舞い上がった気分になりました。

 

先生がその場で弾いてくださった煌めく音はずっと忘れないと思います。

 

失礼と思いつつも、そのマスタークラス後に思い切って先生の連絡先を聴きました。

 

 いつかフランスに行って先生に習いたいと思いました。

 

先生は快く連絡先を教えてくださり、レッスンが必要なら連絡してね、と言ってくれました。

 

その日購入したマズルカとドビュッシーのCDは擦り切れるほど聴きました。

 

次の年急なアレルギーショックでヨーロッパから呆気なく撤退し日本に帰る事になるとは、その頃私はまだ知りませんでした。