北欧のスウェーデンに長期滞在していたスメタナ。
そこで初めて目にした海からインスピレーションを得て書かれたのがこの「海辺にて」です。
海というものは、チェコ人であるスメタナにとって、とても不思議で印象に残るものであったといいます。
チェコには海がないので海というものに馴染みがなかったのでしょう。
さて、私の留学していた時もチェコでは魚介類は基本的にとても珍しいものでした。(少し曲目解説からずれます)
現地では食べものも肉中心・ビールが友達、ですから、そんなにチェコ人の皆さんは気にならないのかもしれませんが、日本人の私は魚介類が殆ど食べれなくてとても寂しく感じました。
聞いた話によれば、現地の猫も、肉食だとか・・猫も、にぼしより、ジャーキーってとこでしょうか。なんだか面白いですね。
プラハからそう遠くないオーストリアのウィーンに行くと、都会なので割と魚介類も食べれて、楽譜を買うついでに魚介類を栄養チャージしに小旅行へいく、そんな感じでした。
(最帰る頃にはいつの間にかプラハの街の魚介レストラン情報に詳しくなり、生のオイスターやムール貝が食べられるパリ通りにあったベルギーレストランや、郊外のクロアチア料理のレストランを見つけ、めったに食べられない魚介類をひそかに摂取していました・・^^;)
チェコでは、海の魚が殆ど手に入らない代わり、川魚の鱒をよく食べました。
鱒は少し独特の香りがしましたが、ハーブなどで臭みが抑えられていて、身も多く、食べ応えがありました。
因みに、チェコでは海水浴の代わり?なのか沼水浴をしているという話を恩師から聞いたことがあります。
沼の周りがビーチの代わり?といった感じらしいです。
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そんなこんなで、海の波の音が様々なパッセージで表現されていくこの「海辺にて」
先生の十八番でレッスンの合間によく弾いて下さいました。初めてのプラハでのリサイタルでも弾きましたし、思い出深い曲です。
ただ、楽譜を見たときは、あまりの音数の多さに驚きました。
楽譜が真っ黒になるぐらい様々なアルペジオで波を表現し、それと一緒に物悲しい旋律を紡いで行き、まるで女性の歌声が聞こえて来るかのようです。
人間対自然という構図を表しているように感じられます。
穏やかな波が次第に表情を変えて行き、時には荒々しい大波となって人々を襲います。
しかし、曲の最後ではいつもの穏やかさを取り戻しまた静かな海が戻ります。
スメタナは海に例えて何かを物語っているようです。
自然への畏れ、人間の無力さ、海の雄大さ・・色々なイメージを湧かせてくれる作品となっています。